【相談員体験談①】月10万円以内の老人ホームは見つからなかった|県外まで広げて探した実例

月10万円以内の老人ホームを県外まで広げて探した相談員体験談 相談員の体験談

「できれば月10万円以内で入れる老人ホームを探してほしい」

老人ホーム紹介相談員として仕事をしていると、このような相談をいただくことがあります。老人ホームの費用は、ご本人の年金やご家族の生活費にも関わるため、「できるだけ安く抑えたい」という希望は決して珍しいものではありません。ただ、希望する金額ですべての条件を満たせる施設が必ず見つかるとは限りません。

今回は、リハビリ病院から相談をいただいた、ある男性の老人ホーム探しについてご紹介します。ご家族からは「できれば月10万円以内に抑えたい」という希望がありましたが、実際にはその金額で条件に合う施設を見つけることはできませんでした。そこで、探す地域を県外まで広げながら、できるだけ費用を抑えつつ、ご本人が生活していける施設を探しました。

最終的には、価格だけではなく「この施設ならお願いできそう」とご家族が感じられた施設への入居が決まりました。今回は、その施設探しから入居当日まで、私が実際に行った支援をご紹介します。

※個人が特定されないよう、地域や一部の状況はぼかしてご紹介しています。

相談内容と施設探しの条件

リハビリ病院からいただいた施設探しの相談

今回ご相談いただいたのは、60代の男性です。骨折をきっかけに入院し、その後リハビリ病院でリハビリをされていました。介護度は要介護2。入院前は、奥様と娘様と一緒に暮らしていました。

ただ、ご自宅はエレベーターのない集合住宅の上階にありました。退院できる状態になったとしても、階段の上り下りを考えると、「このまま自宅へ戻って生活するのは難しいのではないか」ということで、退院先として老人ホームを探すことになりました。今回のキーパーソンは奥様でした。

一番大きな条件は「できるだけ費用を抑えること」

施設を探す際、ご家族から地域について強い希望はありませんでした。その代わり、一番大きな条件だったのが費用です。ご主人の年金と奥様の収入で、ご主人の施設費用だけではなく、ご家族自身の生活も続けていかなければなりません。そのため「なるべく安い施設を探してほしい」という希望がありました。さらに、「できれば月10万円以内にできないでしょうか」というお話もありました。

まずは、現在生活されている地域から比較的近い範囲で、低価格の施設を探しました。しかし、条件に合う施設を月10万円以内で見つけることはできませんでした。

老人ホームの月額費用は、広告などに記載された家賃・管理費・食費だけで判断できるとは限りません。介護保険サービスの自己負担、医療費、日用品費、個別の有償サービス費なども含め、毎月の総額を確認する必要があります。費用の内訳は、「老人ホームの費用はいくら?月額料金以外にかかるお金を解説」で紹介しています。

「月10万円以内」にこだわりすぎず、現実的な選択肢を探した

ご家族の希望だからといって、「月10万円以内で絶対に探します」とは言えません。見つからないものを、あるかのようにご案内することもできません。

そこで、月10万円は超えてしまうものの、その中でもできるだけ費用を抑えられる施設まで条件を広げて探しました。さらに、探すエリアも県外まで広げました。すると、比較的低価格で、ご本人の状態について相談できる施設が2か所候補に上がりました。

どちらもご家族の自宅からは距離があります。それでも、ご家族から「両方見てみたいです」と希望をいただきました。

安さだけでなく、入居後の生活も考えた

今回の施設探しでもう一つ重要だったのが、入居後にご家族がどのくらい支援できるのかという点です。ご家族にも仕事や生活があります。入居後、頻繁に施設へ通ったり、日常的にご本人の身の回りのことを支援したりするのは難しい状況でした。

そのため、「料金が安ければどこでもいい」というわけではありません。できるだけ費用を抑えながらも、ご家族の支援が少ない状態でも、ご本人が施設で生活を続けていけるかということも確認する必要がありました。施設費用だけを見れば安くても、「これはご家族で準備してください」「こちらは毎回ご家族に対応していただきます」ということが多ければ、ご家族の希望とは合いません。金額と生活支援の両方を考えながら施設を探す必要がありました。

県外の2施設を見学した

車がなかったため、私が送迎して2施設を見学した

ご家族は車を持っていませんでした。候補となった施設はいずれも遠方です。公共交通機関だけで2施設を見学するのはかなり大変だったため、今回は私がご家族をお迎えに行き、車で見学へ向かいました。1日に県外の2施設を回る、かなり長距離の見学です。

施設見学では、料金だけではなく、実際の施設の雰囲気、職員さんの対応、居室、食事、介護や生活面でどこまで対応してもらえるのかなどを、ご家族と一緒に確認しました。

2施設とも良かった。それでも最終的には1施設に決まった

今回見学した2施設は、どちらも良い施設でした。低価格だからといって「安いから仕方がない」という印象の施設ではありませんでした。ご本人に必要な介護や生活支援について相談できる施設で、どちらも十分に候補になりました。

では、何が最終的な決め手になったのか。それは、ご家族と施設長との相性でした。

決め手になったのは、施設長との会話

最終的に選ばれた施設では、見学時に施設長がご家族の話をしっかり聞いてくれました。そして、「こういうことであれば、うちではこのような対応ができます」「入居後は、こういう形で支援できます」と、ご家族の状況に合わせて具体的に説明してくださいました。そのやり取りを聞いていて、ご家族も「ここならお願いできそう」と感じられたのだと思います。

候補になったもう一つの施設が悪かったわけではありません。料金面でもサービス面でも十分候補でした。ただ、実際に話してみたときの安心感や、ご家族との相性という部分で、最終的にこちらの施設が選ばれました。

老人ホーム探しでは「百聞は一見にしかず」ということをよく感じます。料金表やパンフレットだけでは分からないことがあります。実際に施設へ行き、施設長や職員さんと話してみることで、「ここなら任せられそう」「ここは自分たちには少し違うかな」ということが見えてきます。

施設決定後から入居当日までの支援

施設が決まったあとも、入居までの準備があった

施設が決まったら、それで終わりではありません。入居するためには、退院日の調整や必要書類、契約、荷物の準備などがあります。今回のご家族は車を持っていなかったこともあり、入居当日についても私がお手伝いしました。

退院当日は、ご家族を迎えに行くところから始まった

入居当日。まず私が奥様と娘様をご自宅までお迎えに行きました。そこから一緒に病院へ向かいます。病院では、ご主人の退院手続きをしていただきました。

ご本人は介護タクシーを利用して、入居する施設へ向かいました。私は奥様と娘様を車に乗せて、同じく県外の施設へ向かいました。病院を退院して、そのまま施設へ入居するという流れです。

ご家族が契約している間に、私は生活用品を買いに行った

施設へ到着した後は、奥様と娘様に施設との契約を進めていただきました。私は契約には立ち会いませんでした。その代わり、ご家族から「入居に必要な物を買ってきてもらえませんか」と依頼をいただきました。

そこで、ご家族が契約をしている間に、私が買い物へ向かいました。衣類、衣装ケース、そのほかご本人が施設で生活を始めるために必要な物。それらを購入して施設へ戻り、お部屋へ設置しました。

老人ホームへの入居では、「施設が決まった=すぐ生活できる」とは限りません。実際には、ご本人がその日から生活できるように、衣類や収納用品、日用品などを準備する必要があります。今回は、ご家族だけでそこまで対応するのが難しかったため、生活支援サービスとしてお手伝いしました。

入居後、その日のうちに転居手続きも行った

契約とお部屋の準備が終わった後、ご主人はそのまま施設で新しい生活を始めました。その後、私は奥様と娘様と一緒に市役所へ向かいました。そこで、住所変更に必要な手続きを行いました。手続きが終わった後は、奥様と娘様を再び車に乗せ、ご自宅までお送りしました。

朝、ご自宅へ迎えに行く。病院へ行く。退院手続きをする。県外の施設へ向かう。ご家族が契約している間に買い物をする。部屋を準備する。市役所で住所変更の手続きをする。そして、ご家族をご自宅まで送る。今振り返っても、かなり長い一日でした。

この相談を通して感じたこと

一番印象に残っていること

このケースで私が一番印象に残っているのは、「安い施設を探す」だけでは解決できなかったことです。

ご家族には限られた収入の中で生活を続けていかなければならない事情がありました。そのため施設費用はできる限り抑えなければなりません。一方で、ご家族が頻繁に施設へ行き、ご本人の生活を支えることも難しい状況でした。つまり、費用が安いこと、そしてご家族の支援が少なくても生活を続けやすいこと。この2つを両立できる施設を探す必要がありました。ここが今回の施設探しで一番難しかった部分です。

「月10万円以内」が無理なら、そこで施設探しが終わるわけではない

今回、ご家族が最初に希望されていた月10万円以内では施設を見つけることができませんでした。しかし、「10万円以内の施設がないので無理です」で終わらせるのではなく、どこまでなら費用を抑えられるのか、エリアを広げれば選択肢は増えるのか、ご本人の状態に対応できるのか、ご家族の支援が少なくても生活できるのかと、条件を一つずつ整理していきました。

その結果、当初の希望金額は超えましたが、ご家族が納得できる施設を見つけることができました。

安い施設を探すときこそ、実際に見学してほしい

費用を抑えたいと考えると、どうしても月額料金ばかりに目が行きます。もちろん料金はとても重要です。ただし、「一番安い施設=一番合う施設」とは限りません。

今回も候補の2施設は、どちらも比較的低価格でした。それでも最終的な決め手になったのは、数千円、数万円の差ではなく、施設長との会話や、ご家族が「ここならお願いできる」と感じられたことでした。パンフレットだけでは分からない部分です。だからこそ、できる限り実際に見学することをおすすめしています。

見学時に確認したいポイントは、「老人ホーム見学で確認すること|後悔しないためのチェックポイント」で詳しく紹介しています。

質問項目を手元で確認したい方は、「老人ホーム見学チェックリスト|そのまま使える質問項目」も参考にしてください。

参考にした公的情報

※老人ホームの料金や受けられるサービス、家族に求められる対応は施設やご本人の状態によって異なります。契約前に料金表・重要事項説明書・入居契約書を確認し、不明点は施設へ直接確認してください。

まとめ|予算だけでなく「入居後の生活」まで考えて探す

今回のご相談では、月10万円以内という希望から施設探しが始まりました。実際にはその予算内で条件に合う施設を見つけることはできず、エリアを県外まで広げながら、できるだけ低価格の施設を探しました。

そして、候補になった2施設を実際に見学。最終的には、料金だけではなく、施設長の対応や、ご家族の状況に合わせた支援を提案してくれた施設への入居が決まりました。入居当日には、退院から施設への移動、生活用品の買い出し、お部屋の準備、住所変更の手続きまでお手伝いしました。

老人ホーム探しでは、「いくらで入れるか」だけではなく、「入ったあと、その人がどう生活するのか」まで考えることが大切です。そして、ご家族がどこまで支援できるのかも家庭によって違います。予算、距離、介護、生活支援、ご家族の負担、施設との相性。こうした条件を一つずつ整理しながら、その方にとって現実的な選択肢を探していくことが、老人ホーム紹介相談員としての私の仕事だと思っています。

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