入院前は歩いて食事もできていた方が、退院後には元の老人ホームに戻るのが難しくなることがあります。状態が急に変わると、ご家族は退院までの短い期間に、新しい住まいを探すことになります。
今回は、誤嚥性肺炎による入院後、経鼻経管栄養とたんの吸引が必要になった女性の事例です。医療的な対応を確認したうえで、家族が会いに行きやすい施設を選ぶまでの流れをご紹介します。
※実際の相談を基にしています。個人や施設が特定されないよう、一部の情報を伏せています。面会、料金、受け入れ条件は相談当時の各施設の運用です。
誤嚥性肺炎で入院し、元の施設へ戻れなくなった
ご相談は病院からいただきました。ご本人は80代の女性。入院前は要介護2で、介護付き有料老人ホームに暮らし、歩行器で施設内を移動しながら、食事もご自身で口から取っていたそうです。
誤嚥性肺炎で入院した後、状態が大きく変わりました。入院中に要介護5へ区分変更となり、退院時には寝たきりで日常生活に全面的な介助が必要でした。栄養は鼻から胃へ通した管を使う経鼻経管栄養で取り、たんの吸引も1日に6回程度必要な状態です。
特に課題だったのは、夜間にも医療的な対応が必要だったことです。元の施設は看護職員の配置が日中中心で、今回の状態では受け入れを続けることが難しく、退院後の住まいを探すことになりました。
「24時間看護」だけで判断せず、必要なケアを具体的に確認
施設を探す際に確認したのは、「24時間看護」という表示の有無だけではありません。経鼻経管栄養と、夜間を含むたんの吸引に、その方の状態と必要な頻度で対応できるかを施設ごとに確認しました。看護職員の勤務体制、訪問看護との連携、受け入れ条件も施設によって異なります。
たんの吸引と経管栄養は医行為です。一定の研修を受けた介護職員等も、医師・看護職員との連携など所定の条件の下で実施できる制度があります。ただし、制度上可能な行為と、個々の施設が実際に受け入れられる状態・時間帯は別に確認が必要です。制度の概要は厚生労働省の喀痰吸引等制度でも確認できます。
対応できない施設を見学してから受け入れ不可と分かると、限られた準備期間がさらに短くなります。病院側と必要なケアの内容を整理し、空室と受け入れの可否を先に照会しました。
退院まで約1か月。見学から決定までに使えたのは約2週間
病院から聞いていた退院の目安は、およそ1か月後でした。相談を受けてすぐに候補を調べ、提案資料をご家族へお渡ししましたが、実際にご連絡をいただいたのは約2週間後。そこから見学、施設の決定、入居準備まで、使える期間は実質2週間ほどになりました。
候補としてご案内できたのは2施設で、相談当初はいずれも空室がわずかでした。その後、一方は一度満室になりましたが、施設側にご本人の状態と退院時期を伝えて改めて調整していただき、見学と入居の検討を進められました。空室や受け入れ条件は短期間でも変わります。
候補の2施設を、医療対応と面会条件で比較した
ご家族の希望は、自宅から通える範囲で、できるだけ面会しやすいこと。ご本人は入院後に意思疎通が難しくなっており、見学には息子さんご夫婦と私の3人で伺いました。
1件目:近くて新しい介護付き有料老人ホーム
1件目は、ご家族の自宅から車で約30分の介護付き有料老人ホームです。建物は比較的新しく、館内の印象や職員の丁寧な対応をご家族も気に入られました。必要な経鼻経管栄養とたんの吸引についても、事前に状態を伝え、受け入れを相談できる施設でした。
一方、相談当時の面会は入居者1人につき週1回、10分程度という運用でした。息子さんご夫婦のほか、娘さんや親戚も会いに行きたいと考えていたご家族には、大きな悩みになりました。
2件目:遠いが、面会を相談しやすい住宅型有料老人ホーム
2件目は、ご家族の自宅から車で約1時間の住宅型有料老人ホームです。訪問介護と訪問看護の事業所が併設されており、今回必要なケアについて夜間を含めた対応を確認しました。小規模で建物は新しくありませんが、清掃が行き届き、職員も明るく接してくださいました。
月額の提示額は1件目より約2万円高く、移動時間も長くなります。ただ、相談当時は面会回数を厳しく制限せず、夜間の面会も相談できるとの説明でした。時間帯によって職員の対応に少し時間がかかる可能性はありましたが、ご家族が会いに行ける機会を大切にできる条件でした。
面会ルールは感染対策や施設運営により変わることがあります。「いつ、誰が、どのくらい会えるか」は、見学時だけでなく入居前にも確認しておくと安心です。
ご家族が選んだのは、面会しやすい2件目
2施設とも、職員の人柄や必要なケアの相談ができる点を評価されました。距離、建物の新しさ、提示された月額料金では1件目に利点がありましたが、ご家族が選んだのは2件目でした。
「遠くても、時間を気にせず会える2件目がいいです」。ご家族からは、そうお話がありました。ご本人が自分で希望を伝えることが難しくなった今、息子さんご夫婦だけでなく、娘さんや親戚も会いに行ける環境を重視されたのです。
なお、月額の比較では家賃・管理費・食費などの基本料金だけでなく、介護保険の自己負担、訪問看護などの費用、医療費や消耗品も含めた見積もりを個別に確認する必要があります。この事例の約2万円という差が、ほかの施設にも当てはまるわけではありません。
入居前は病院と施設の情報をつないだ
施設が決まってからは、入居前のアセスメントに私も同席しました。アセスメントは、ご本人の状態や必要な支援を施設が確認する場です。病院と施設の間で、吸引の頻度や時間帯、経管栄養の方法、身体の状態などを共有し、実際に受け入れられるかを確かめました。
入居当日は介護タクシーで病院から施設へ移動し、以前のホームの退去手続きと荷物の搬出は息子さんご夫婦が対応されました。私は当日の立ち会いはしていません。紹介会社がどこまで支援するかは会社や案件によって異なります。私が行っている支援の例は老人ホーム紹介会社はどこまでしてくれる?でも紹介しています。
入居後も、ご家族が会いに来られている
入居後に施設から伺ったところ、息子さんご夫婦のほか、娘さんや親戚の方も面会に来られているそうです。ご家族が施設選びで大切にした「会いに行けること」が、入居後の暮らしでも生かされていました。
医療的ケアが必要な方の施設探しでは、必要な対応を安全に受けられるかが最初の条件です。そのうえで、本人がこれまで大切にしてきたことや、ご家族がどう関わりたいかも確かめると、選ぶ基準が見えてきます。ご本人の意思を直接確認しにくい場合も、これまでの希望や生活について病院・ご家族・関係者で共有することが大切だと感じました。
まとめ|医療対応を確認し、会える暮らしも考える
この事例では、入院後に経鼻経管栄養とたんの吸引が必要になり、元の施設へ戻ることが難しくなりました。退院までの限られた期間に2施設を比較し、ご家族は距離や料金よりも面会しやすさを重視して住まいを選びました。
入院中に状態が変わり施設を探すときは、病院の相談員に現在のケア内容と退院の見通しを確認し、候補施設へ夜間を含む受け入れ条件、空室、面会方法、費用の総額を早めに相談してみてください。治療やケアの方法そのものは、主治医・看護職員と相談して判断しましょう。



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