【相談員体験談⑥】夫婦で一緒に老人ホームへ|15施設を見学して「今すぐ2人で入れること」を選んだ実例

相談員クラッシュと高齢夫婦が夫婦部屋・空室・予算・介護体制を比べて老人ホームを選ぶイラスト 相談員の体験談

今回は、地域包括支援センターからご相談をいただいた、ご夫婦で一緒に老人ホームへ入りたいというケースをご紹介します。

ご主人は80代で、相談の時点ではまだ自立していました。奥様は70代で要介護2。ご自宅では、ご主人が奥様の介護を担っていましたが、このまま二人だけで暮らしていくのは難しいのでは、ということで施設入居を考えることになりました。

ご夫婦のいちばんの希望は、「二人で同じ部屋に入りたい」ということ。ご主人は、自立しているうちは自由に外出したいし、できれば居室にシャワーやキッチンも付いていてほしい、というご希望もありました。

ただ、夫婦部屋に加えて、空室、介護体制、予算、設備まで条件を重ねると、候補は一気に絞られてしまいます。

最終的にお二人が選ばれたのは、理想の条件をすべて満たす施設ではなく、「今すぐ夫婦で一緒に入れる」介護付き有料老人ホームでした。約15施設を見学し、お二人にとって譲れない条件を整理して選んだ経緯をお伝えします。

※個人が特定されないよう、年齢・地域・施設情報などは一部ぼかしています。料金、空室、設備、受入条件は、この事例当時のものです。

相談のきっかけ|ご主人が奥様を介護していた

ご相談は、地域包括支援センターからいただきました。

ご主人は80代、奥様は70代。奥様は要介護2で、ご主人が日常的に介護をされていました。ご主人ご自身は当時まだ自立していましたが、このまま自宅で奥様の介護を続けることに不安があり、地域包括支援センターに相談。そこから、老人ホーム探しの話が私のところへ届きました。

施設に入るなら、別々ではなく、できるだけ一緒に暮らしたい。それがお二人の強い希望でした。

一番の希望は「夫婦部屋」|設備と将来の介護も考えた

二人で入れる部屋があっても、空いているとは限らない

最初に大きな壁になったのが、夫婦部屋の少なさです。

一人部屋なら空いていても、夫婦で入れる広さの居室は限られています。夫婦部屋のある施設でも、ちょうど空いているとは限りません。今回の施設探しでも、希望に合う夫婦部屋と空室がそろう候補は限られていました。

夫婦部屋と空室については、老人ホームは全国に何施設ある?入居率と空室、夫婦部屋が少ない理由でも解説しています。

ご主人の自由な暮らしと、奥様の介護体制を両立したい

ご主人はまだ自立していたので、「部屋にシャワーやキッチンがあること」「自由に外出できること」も希望されていました。こうした設備は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や、住宅型有料老人ホームの一部で見つかることがあります。ただし、設備や外出のルールは施設ごとに異なります。

一方で、奥様は要介護2で、これから介護の量が増えていくことも考えられます。自由度だけでなく、将来の介護体制まで見ながら探す必要がありました。

住宅型やサ高住も見学|将来の介護費用まで確認した

施設探しでは、介護付き有料老人ホームだけでなく、住宅型有料老人ホームやサ高住も候補に入れました。設備や自由度だけを見れば、ご主人の希望に合う施設もありました。

ただ、料金のご説明をするときは、今の基本料金だけでなく、この先介護が必要になったときにどのくらい費用が増える可能性があるのかも確認しました。

今回候補にした住宅型やサ高住では、必要な介護サービスを別に契約して使う形でした。奥様の介助量が増えたり、ご主人にも介護が必要になったりすると、利用するサービスに応じた介護保険の自己負担などが増えることがあります。介護保険の支給限度額を超える利用や、保険対象外の支援には、別途費用がかかる場合もあります。

そこまでお話しすると、ご夫婦は少し不安になられたようで、自由度だけで施設を決めるのは難しい、という判断になりました。

サ高住の中にも、介護付きの指定を受けた住まいがあります。種類の名前だけで判断せず、その施設の介護の仕組みを確認することが大切です。違いは、老人ホームの種類と違い|特養・有料老人ホーム・サ高住をやさしく比較でまとめています。

予算は二人で総額45万円程度まで

予算については、二人分の施設費用と介護保険の自己負担なども含めて、毎月の総額をおおむね45万円程度までにしたい、というご希望でした。

45万円はご夫婦の希望予算であり、最終的に選んだ施設の実際の支払額ではありません。見積もりでは、家賃・管理費・食費などの基本料金と、介護保険の自己負担、医療費、日用品などを分けて、二人分の総額を確認する必要があります。

資金にはある程度余裕がありましたが、二人分の費用が長く続くことを考えると、月額費用は外せない条件です。夫婦部屋、介護体制、自由度、設備、エリア、そして予算。これらを全部同時に満たす施設を探すのは、かなり難しい状況でした。

約15施設を見学し、「待つか、今入るか」を考えた

空室がない施設も、候補として見ておきたかった

ご夫婦は、「今は空いていなくても、候補になりそうな施設は見ておきたい」というお考えでした。そこで、夫婦部屋に空きのある施設だけでなく、満床で待機の方がいる施設も含めて見学しています。

最終的に、見学したのは約15施設。空室のある施設だけを見ていたら、選択肢はかなり少なくなっていたと思います。今回は、今すぐ入れる施設と、将来空けば入りたい施設の両方を見比べながら探しました。

約15施設という見学数は、この事例でのお二人の希望に沿ったものです。誰もが同じ数を見学する必要はなく、体調や入居までの時間に合わせて候補を絞ることも大切です。

一番気に入った施設は満床だった

見学した中には、ご夫婦がとても気に入った施設がありました。ただ、その施設は夫婦部屋が満床で、すでに待機の方もいらっしゃる状況です。すぐに入れる見込みはなく、いつ空くのかも分かりませんでした。

そこで、「まず別の施設に入居して、その施設に空きが出たら住み替える方法もありますよ」とお話ししました。ところがご夫婦は、一度引っ越して暮らし始めたあとで、また荷物をまとめて引っ越すのは大変だと考え、待つことは選ばれませんでした。

理想の施設が空くのを待つより、今すぐ二人で一緒に暮らし始めたい。それが、ご夫婦の出した答えでした。

見学時の確認事項は、老人ホーム見学で確認すること|後悔しないためのチェックポイントも参考にしてみてください。

最終的に選んだのは、エリアを広げた介護付き有料老人ホーム

最終的に入居されたのは、当初希望していたエリアから少し外れた場所にある、介護付き有料老人ホームです。

決め手は、夫婦部屋に空きがあり、二人ですぐに入れること。ただ、最初に希望していた居室内のシャワーやキッチンはなく、お部屋は居室スペースとトイレがあるだけのシンプルな造りでした。設備の面では、希望を妥協した形です。

それでも、奥様のこれからの介護を考えると、施設の介護体制を利用しながら暮らしていける、という安心感がありました。何より、夫婦で一緒に暮らせることが大きかったのだと思います。

なお、介護付きであれば、どんな状態になっても必ず住み続けられるというわけではありません。自立の方の受入条件、介護や医療への対応範囲、追加費用、退去条件は施設ごとに確認が必要です。

私が行った支援|送迎・見学同行・入居前の状態確認

今回、私は施設見学の送迎と見学への同行をしました。入居前のアセスメントにも同席して、施設側とご夫婦の状態や生活の様子を確認しています。アセスメントとは、必要な介護や支援を把握するために、心身の状態や暮らし方などを確認することです。

契約のときは息子様ご夫婦が一緒に対応されて、引っ越しも引っ越し業者さんを利用されました。ご家族がしっかり動いてくださるケースでは、紹介会社がすべての手続きを担うのではなく、ご家族と役割を分けながら進めることもあります。

入居後|ご主人も要介護1になり、夫婦で一緒に生活

入居後、ご主人にも介護が必要になり、その後に伺った時点では要介護1でした。奥様は車いすで生活されていて、ご主人が車いすを押してあげることもあると聞いています。施設の方からは、ご夫婦で楽しく過ごされていると伺っています。

相談の頃は「自分はまだ自立している」という状況だったご主人ですが、その後、ご自身にも介護が必要になりました。将来の介護体制を考えて介護付き有料老人ホームを選んだことが、結果的にその後の暮らしにもつながったのかな、と感じています。

この事例から感じたこと|夫婦入居は優先順位が大切

夫婦で一緒に入りたい場合は、一人で探すときより条件が増えます。夫婦部屋があるか、空室はあるか、お二人それぞれの介護度、費用、設備、外出の自由度、希望エリア。確認することが一気に多くなります。

今回も、ご主人が希望していたシャワー・キッチン付きの居室や、住み慣れた地域という条件は、最終的に妥協されました。その代わりに優先したのが、次の三つです。

  • 夫婦で同じ部屋に入れること
  • すぐに入居できること
  • この先介護が増えても暮らし続けやすいこと

理想の条件をすべて満たす施設が、必ず見つかるとは限りません。特に夫婦部屋のように候補が限られている場合は、「絶対に譲れないこと」と「妥協できること」を、先に整理しておくと動きやすくなります。

まとめ|「今すぐ二人で暮らせる施設」を選んだ

ご主人が奥様を介護していたご夫婦が、在宅での生活に不安を感じて、二人で老人ホームに入居したお話でした。

夫婦部屋、シャワー・キッチン、自由な外出、住み慣れた地域、総額45万円程度という希望予算。希望はいくつもありましたが、すべてを満たす施設は見つかりませんでした。

約15施設を見学して、いちばん気に入った施設は満床。最終的には、希望エリアから少し離れていて、居室の設備もシンプルな介護付き有料老人ホームを選ばれました。「今すぐ夫婦で一緒に入れること」を、何より優先されたからです。

その後ご主人も要介護1になりましたが、お話を伺った時点でも、奥様の車いすを押すなどしながら、ご夫婦で一緒に暮らされていました。

夫婦での施設探しは、条件を増やすほど選択肢が少なくなります。まずはお二人にとって何がいちばん大切か、いつまでに入居したいかを話し合い、予算と将来の介護も含めて相談してみてください。

制度の参考:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」

コメント

タイトルとURLをコピーしました