要介護3でも、今の生活で必要な支援は人によって違います。今回ご紹介するのは、骨折後に認定を受けたものの、その後回復し、身の回りのことはほぼ自分でできていた80代男性の施設探しです。
住み慣れた地域で外出を続けたい。自分で買った食べ物を部屋で食べたい。毎月の総額は、将来の介護も考えておおむね15万円に抑えたい。こうした希望に合う施設を探し、施設側と個別に相談した経緯をお伝えします。
※実際の相談を基にしています。個人や施設が特定されないよう、地域や家庭の事情など一部の情報を伏せています。施設の対応や料金は相談当時の個別条件です。
生活環境が変わり、一人暮らしが難しくなった
相談をくださったのは担当のケアマネジャーでした。ご本人は80代の男性で、当時は配偶者と暮らしていましたが、今後は一人で生活することに。食事の準備や掃除など、これまで家族が担っていた家事を一人で続けるのは難しいと考え、住まいを探すことになりました。
ただし、必要だったのは常に手厚い身体介護を受ける場所ではありません。ご本人ができることを続けながら、家事や見守りの面で安心できる住まいを探す相談でした。
要介護3でも、回復後の暮らしはほぼ自立
要介護3の認定を受けたのは、以前、骨折で入院していた時期です。その後かなり回復し、相談時には身の回りのことをほぼ自分で行えていました。介護サービスも多くは必要としていませんでした。
介護度だけから「多くのサービスが必要」「一人で外出できない」と決めつけず、現在の歩行、食事、入浴、家事などを具体的に確認することが大切です。介護サービスの内容も、本人の希望と心身の状態を踏まえて考えます。厚生労働省の介護サービス利用の説明でも、ケアプランに本人の希望と状態を反映することや、状態が変わった場合の区分変更申請が案内されています。
この事例で区分変更をしたということではありません。認定時と今の状態に差がある場合は、担当ケアマネジャーや市区町村に、見直しの必要性も相談できます。入居条件に介護度がある施設では、将来認定が変わったときの扱いも事前確認が必要です。
希望は「地域・外出・自室での飲食・総額15万円程度」
ご本人が大切にしていたのは、住み慣れた地域を離れずに暮らすことと、これまでの自由な生活を続けることでした。単独で外出できるか、外で買った食べ物を自室で食べられるかも確認したい条件です。
費用は、現在だけでなく、今後介護サービスが増える場合も見据えて、毎月の総額をおおむね15万円に抑えたいとの希望でした。貯蓄があっても、生活環境の変化によって支出が続く見込みだったためです。
施設の「月額料金」には、家賃・管理費・食費などの基本料金だけが示されることもあります。実際には介護保険の自己負担、医療費、消耗品、追加サービス費などもかかり得ます。将来の費用を確約できるわけではないため、今の見積もりと、利用するサービスが増えた場合の試算を分けて考えました。
候補は3施設。希望に最も近い施設は1つ
地域内で候補を確認した結果、ご本人の希望をほぼ満たせそうだったのは1施設でした。それでも比較できるよう、住宅型有料老人ホーム1件とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)2件、合計3施設の条件をご説明しました。
1件目:施設側が個別の条件を検討した住宅型有料老人ホーム
1件目の住宅型有料老人ホームは、要介護3以上を入居条件とし、身体介助が必要な方も多い施設でした。通常の運用では、単独外出や購入した食べ物を館内で食べることに制限がありました。
ご本人の状態と希望を施設長へ具体的に伝えると、施設長が運営側と相談してくださいました。その結果、この事例では、行き先と帰宅予定時刻を伝えることを条件に単独外出を認め、自室での飲食も他の入居者へ食べ物を渡さないなどの配慮を条件に相談できました。介護サービスは、ご本人の状態に合わせ、当時は入浴時の見守りを中心に検討しました。
費用も、将来サービスが増えた場合の試算を含め、希望に比較的近い条件でした。ただし、これは施設が当時、本人の状態を確認して行った個別対応です。同じ施設でも、状態や契約条件、運営方針によって扱いは変わります。
2件目:外出できるが、生活のペースに合わなかったサ高住
2件目のサ高住では単独外出ができました。一方、相談当時の提案では、併設のデイサービスへの参加をお願いする条件がありました。ご本人は必要なサービスだけを使い、自分のペースで過ごしたいと考えていたため、希望とずれる部分がありました。
サ高住全体にデイサービス利用が義務付けられているわけではありません。安否確認と生活相談以外のサービスの提供方法は住宅ごとに異なります。介護サービス情報公表システムのサ高住の説明も参考に、利用条件は各住宅の契約・重要事項説明書で確認してください。
3件目:自由度は高いが、予算を超えたサ高住
3件目のサ高住は、単独外出と自室での飲食ができ、介護サービスの利用もご本人の希望に合っていました。ただ、提示された毎月の総額は約17万円。希望の15万円程度を超えます。
今は支払えても、長く続けられるかは別の話です。介護が必要になって追加サービスを利用した場合、さらに費用が変わる可能性も考えました。
ご本人が見学して選んだのは1件目
3施設の違いをご説明したところ、ご本人が見学を希望したのは1件目の住宅型有料老人ホームでした。施設内の様子を確認したうえで、外出、自室での飲食、必要な介護サービスについて、施設がご本人の状態に合わせて検討してくれたことが、納得につながったと思います。
ご本人はこの施設への入居を決められました。個別に認められた条件については、口頭の印象だけで判断せず、誰がどのような条件で認めたのか、今後状態が変わったときはどうなるのかを入居前に確認することが大切です。
入居後も外出を続け、暮らしの手続きも進めた
入居後、ご本人は行き先と帰宅予定時刻を伝えながら、よく外出されていました。施設に入っても、外へ出かける生活を続けられていたのです。
私も住所変更や、それまでの住まいを引き払うための手続きに同行しました。施設探しが終わっても、住所、荷物、契約など、暮らしを移すための作業があります。紹介会社の支援範囲は会社によって異なりますが、私が行っている支援の一例は老人ホーム紹介会社はどこまでしてくれる?で紹介しています。
介護度と、本人が続けたい暮らしの両方を見る
後日、ケアマネジャーから「その条件で入れる施設があったんだね」と言われたことが印象に残っています。今回のように個別の調整ができるとは限りません。それでも、パンフレットの文言だけで判断せず、現在の状態と希望を具体的に伝えることで、確認できる選択肢があります。
要介護3という認定が同じでも、必要な支援と望む生活は一人ひとり違います。施設選びでは、介護度に加え、何を自分で続けたいのか、どこに手助けが必要か、外出や食事のルールはどうかを確かめます。条件の整理には相談員が実際に提案する老人ホームの選び方も参考にしてください。
まとめ|施設に入っても、その人らしい自由を考える
この事例では、要介護3の認定を受けていた男性が、回復後の自立した生活に合う住まいを探しました。地域、単独外出、自室での飲食、費用という条件で3施設を比較し、個別の運用を確認できた住宅型有料老人ホームを選んでいます。
施設への入居を考える際は、本人の現在の状態と希望を具体的に伝え、外出や食事のルール、費用の総額、介護が増えた場合の対応を確認してみてください。条件付きの対応がある場合は、入居後も続けられる条件まで確かめることが大切です。



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