「一人暮らしを続けてきたけれど、最近転ぶことが増えた」「家族は遠方で、頻繁には手伝えない」。こうした状況で老人ホームを探すときは、費用だけでなく、ご本人がどこで、どのように暮らしたいかも大切です。
今回は、ケアマネジャーから相談を受けた、要介護2の女性の事例をご紹介します。ご本人の希望を聞きながら3施設を見学し、入居後の費用と将来の特別養護老人ホーム(特養)への申込みも考えて住まいを選びました。
※実際の相談を基にしています。個人が特定されないよう、地域など一部の情報を伏せています。
転倒が続き、一人暮らしに不安が出てきた
相談をくださったのは、担当のケアマネジャーでした。ご本人は70代後半の女性で、要介護2。デイサービスを利用しながら、一人暮らしを続けていました。
歩くことはできましたが、ふらつきがあり、私の記憶では3回ほど転倒されていました。転倒については、ご本人から直接伺ったのではなく、ケアマネジャーやデイサービスから連絡が入って分かったことです。
買い物や毎日の食事の準備も、少しずつ負担になっていました。ケアマネジャーは今後の安全を心配して施設入居を提案しており、ご本人も入居に前向きでした。
家族の支援は難しく、希望は「年金の範囲内」
ご家族は離れた地域に住んでおり、日常的に通って支えることは難しい状況でした。継続的な費用援助も難しかったため、できるだけご本人の年金の範囲で暮らせることが重要な条件でした。
ご家族は「本人が気に入るところがいい」と希望されていました。一方、ご本人には、できれば住み慣れた地域で暮らしたいという思いがありました。料金だけで決めず、場所、ご本人の希望、入居後も支払いを続けられるかを一緒に考えました。
今の住まいを確保し、将来は特養も検討する
ケアマネジャーとも相談し、まずは現在の状態で安心して暮らせる施設を探すことにしました。そのうえで、介護度や生活状況が変わったときには、特養への申込みも検討する方針です。
特養への新規入所は原則として要介護3以上が対象です。ただし、要介護1・2でも、やむを得ない事情で特養以外の生活が著しく難しい場合には特例入所の仕組みがあります。今回の施設探しでは、特養だけを待つのではなく、今の暮らしの安全を先に確保することを優先しました。詳しくは厚生労働省の入所に関する指針もご確認ください。
介護付き・住宅型を含む3施設を見学
候補には、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームを含めました。住み慣れた地域に近い施設と、少し離れるものの費用を抑えられる施設を比較し、ご本人と一緒に3施設を見学しました。
ご本人が最も気に入ったのは、最初に訪れた住宅型有料老人ホームでした。施設長や職員の人当たりがよく、入居者の方々の雰囲気も明るかったことが印象に残ったようです。「楽しそう」「ここならいろいろやってくれそう」と感じられたことが大きかったと思います。
建物や料金表は事前に確認できます。しかし、職員の接し方や施設の空気感は、実際に見学して初めて分かることがあります。今回は、ご本人が足を運んで比較できたことが、納得した選択につながりました。施設選びの条件の整理については、相談員が実際に提案する老人ホームの選び方もご覧ください。
費用は入居時だけでなく、その先も確認した
選んだ施設については、現在の費用が年金の範囲に収まる見込みかを確認しました。さらに、利用する介護サービスや自己負担が今後変わった場合も想定し、ご家族と支払いについて話し合いました。
確認した時点では、要介護3程度になった場合も、ご本人の年金の範囲で暮らせそうな見込みでした。ただし、介護度だけで毎月の請求額が決まるわけではありません。実際の費用は、利用するサービス、介護保険の負担割合、施設の料金や追加費用によって変わります。
ご家族にも見積もりの内容を伝え、支払いを続けられそうか確認してから、入居を進めました。併せて、将来必要になれば特養への申込みも考えておくことをお伝えしています。
ご家族が遠方でも、入居準備を進められた
施設が決まった後は、入居前の状態確認や健康診断などを進めました。ご家族は遠方で付き添いが難しかったため、私も入居前のアセスメントに同席し、健康診断に付き添いました。
ご家族が近くに住んでいない場合、「施設を見つけること」と「契約や受診など、入居までの段取りを進めること」は別の課題になります。誰が何を担当できるかを早めに確認し、一つずつ準備を進めた結果、無事に入居につながりました。
入居後の暮らしと、この事例から感じたこと
入居後に施設から伺ったところ、ご本人は併設のデイサービスにも楽しく通い、新しい暮らしになじんでいるとのことでした。
その後、ご本人は要介護3となり、予定していた特養への申込みもされました。ただし、要介護3になって申し込めば、すぐに入所できるわけではありません。この事例では、確認した時点で待機が続いていました。
今回、特に良かったと感じるのは、ご本人が自分の目で施設を見て、「ここがいい」と選べたことです。転倒への不安がありながらも、ご本人の希望を聞き、いくつかの施設を比べる時間を持てました。
住まい選びは、一度決めたら終わりではありません。ご本人の状態、費用、ご家族の状況が変われば、そのときに合う支援や住まいを考え直すこともできます。
まとめ|本人の希望と、将来の暮らしを一緒に考える
この事例では、一人暮らしで転倒が続き、買い物や食事の準備も負担になっていた女性が、3施設を見学して住宅型有料老人ホームを選びました。年金の範囲で支払いを続けられるかを確認し、将来の特養への申込みも見据えて入居しています。
施設を探し始めるときは、現在の介護度や空室だけで決めず、ご本人の希望、毎月の総費用、状態が変わったときの選択肢を一緒に確認してみてください。ご本人が見学できるなら、その場で感じたことや言葉も、施設を選ぶ大切な手がかりになります。



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